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クラスター爆弾の呪い

ニュージーランド地雷廃絶キャンペーン(CALM)声明文 1999/9/23

 コソボにおけるNATO軍の、あまりにも無責任で過剰なクラスター爆弾を使用を見かねて、ニュージーランドの地雷廃絶キャンペーン(CALM)は、クラスター爆弾の問題についても行動を起こすべく立ち上がった。

 NATO軍がコソボに落とした1100個ものクラスター爆弾によって多くの一般市民が被害にあっており、これ以上の被害の拡大を防ぐには1万5千個と推定されるクラスター爆弾の不発の子爆弾を除去しなければならないと、多くの報道が伝えている。

 にも関わらず、BBCの報道によれば、NATO爆弾処理チームのリーダーは「自分達の仕事は人道主義的な地雷除去ではないのだ」と話しているのである。

 これを受けて、1999年8月16日、国連の地雷問題対策センター(UN mine action coordination centre)ニュージーランドのプログラムマネージャー、フラナガン氏(Lt Col John Flanagan)は、NATOに対して地雷除去をもっと進んでするように強く要請した。フラナガン氏は16人のチームでNGOと共に地雷除去に取り組んでいるが、NATO軍は地域毎の各隊に専門チームをもっており、比較にならないほど大きな地雷除去能力を持っているのである。

 国境なき医師団のシュワンク氏(Roland Schwanke)は「NATOはここで自分たちが落としたものを回収するべきだ。地雷除去に取り組む市民団体に押しつけるのはあんまりだ。NATOが落としたのだから、NATOが地雷除去すべきなのだ」と述べたが、同じように多くの人間が怒っている。人道的見地からの地雷除去をしようとしないのは、NATOにこの地域の人々への関心が欠けていることの証拠だろう。

 ニュージーランド地雷廃絶キャンペーン(CALM)はICBLを通じて、NATOがコソボにおける人道主義的地雷除去に取り組むよう国際的に圧力をかけるようと考えていたが、NATOは調査と地雷原確定作業を実施し、幾つかの部隊によってクラスター爆弾を除去するらしいという情報がフラナガン氏から入ったので、思いとどまった。

 NATO軍のリーダー達は、自軍が最後にはコソボに入ると信じつつもクラスター爆弾の使用に固執したのであり、無責任きわまりない。何千もの子爆弾が不発なまま残ることは分かっていたはずなのだ。

 現在アメリカ空軍のチーフで、空中戦の指揮官であるライアン氏(Maj Gen Michael Ryan)が1995年にボスニアで指揮をとった時、クラスター爆弾の使用を禁止したのはなぜか?それは、クラスター爆弾は破壊する範囲があまりに広く、多くの不発弾を出す可能性があったからなのである。

 コソボにおけるNATO軍と同じく、ラオスやクウェートでクラスター爆弾が大量に使用された時も、戦争後の市民の生活と社会の復興は全く考慮されなかった。

 爆弾が99.95%の確率で、地面に当たると同時かそれより前に爆発することを製造者が保証しない限り、我々はNATOのクラスター爆弾配備取りやめを強く主張する。

 多くのニュージーランド人がラオスの不発弾の問題の深刻さを知っている。政府が不発弾の除去のために資金援助や陸軍の派遣を行っているからである。ラオスは、小さくて貧しく、東南アジアの陸の孤島となっているような国であるが、ずっと貧しい国であったわけではない。不発弾が肥沃な土地を奪い、飢餓と絶望をもたらしたのだ。1964年から1973年までの間、ラオスは世界史の中で最も激しい空爆を受けた。50万回にも上る空爆が行われた。平均すると、まるまる9年間、9分ごとに、爆弾を満載した爆撃機が出動したことになる。ラオス領内には200万トンもの爆弾が落とされ、900万個もの不発弾が残された。 Mennonite Central Committeeは、American Friends Service Committee、OXFAMといった団体と共に、空爆がもたらしている被害を論じ続けてきたし、元の肥沃な耕作地を回復しようと不発弾の除去に取り組んできたが、国際世論にほとんど影響を与えることができていない。

 湾岸戦争は、世界史上もっとも広い範囲で大量にクラスター爆弾が使用された戦争だった。連合軍によって、6万2千個ものクラスター爆弾が、1万個のMLRSロケットと10万個の通常爆弾と共に使用された。すなわち2千4百万個から3千万個の子爆弾がばらまかれたのであり、不発率が5%とするとイラクやクウェートに120万から150万個の子爆弾が地雷化して残っていることになる。ちなみに砂漠地域では不発率は高くなり、30%にもなる。米国政府機関の発表で、少なくとも25人の兵士が自軍の落とした爆弾によって死亡したことが分かっている。

 コソボは爆撃が数ヶ月しか続かなかっただけ、そして期限切れのクラスター爆弾が使用されたがそれが他の爆弾を使い果たしたからではなかっただけ、ラオスよりも幸運だった…。

 次の紛争が起きた時に、今度はその土地がクラスター爆弾の埋まる死んだ地になってしまうことがないように、今すぐにも行動を起こさなければならない。次の紛争が始まる前に我々は行動を起こす必要があるのだ。先日の米国大統領のコソボにおける表明を聞いても分かるように、早急に行動しなくてはならない。クリントンは声明の中で、「紛争鎮圧のためならNATOはヨーロッパやアフリカどこにでも介入する。今すぐにでもするし、明日にでも必要とあらば介入する」と話した。ユーゴスラビアでのNATO軍の空爆について彼は「我々は自分のしたことについて誇りを持っている。なぜならそれはアメリカが存在する意義そのものだからだ」と話した。これは政治家にありがちな“かかってこい"的な発言に過ぎないかもしれないが、クラスター爆弾の犠牲者のことを思えばあまりにも“不適切な"表現である。クリントン大統領は不発弾の及ぼす影響についてもう少し勉強する必要があるだろう。

 CALMはクラスター爆弾をオタワ条約の中に含まれるかどうかについて、ICBLや条約署名国政府に長々と議論してほしいわけではない。クラスター爆弾がもたらしている被害に気づいている国際市民社会や政府に、製造者が99.95%以上の爆弾が不発にならないと保証できるようになるまでは配備を取りやめることを我々は呼びかける。

 スイス、ドイツ、イタリアやカナダなどの地雷廃絶キャンペーンが出した声明は、世界中の地雷廃絶キャンペーンに取り組むメンバーの注意を喚起している。我々はその全ての見解に同意しているわけではないが、彼らの訴えにもっと多くの人々が耳を傾けるべきだと考える。

 ICBLは対人地雷に関して道徳的に勝利を収めた。ICBLがクラスター爆弾が引き起こしている恐怖を世界に知らせれば、クラスター爆弾についても、早い解決を見ることができるだろう。ICBLは特定の種類の爆弾の禁止だけを目的とするべきではない。

 われわれは、「地雷」となってこのような悲劇を招く欠陥のある爆弾についても、糾弾できるし、そうすべきなのだ。我々はICBLのコーディネート委員会に対し、クラスター爆弾を議題に取り上げるよう要求する。オタワ条約にクラスター爆弾を加えるか否かを決めようというのではなく、クラスター爆弾の非人道的な影響を各国キャンペーンに十分に認識するよう訴え、それぞれのキャンペーンが自国政府にクラスター爆弾の配備をやめることを呼びかけるように働きかけて欲しいのである。

 我々は来年のCCW見直し会議、2004年のオタワ条約の見直し会議の時に、クラスター爆弾が議題に取り上げられるよう働きかけていく。だが、その成否は国際市民社会の動き如何による。ラオスで使われた後に行動しなかったことを教訓としようではないか。この信頼性の低い兵器の使用にこだわる国々も、クラスター爆弾が友好国の地上軍や平和維持軍にとって現実に大きな脅威となっているのを見て、考えを改めるべきである。

この声明文(policy statement)は、1999年9月23日に CALMの総会で承認されたものです。詳しくはCALMのサイトでご覧ください。http://www.protel.co.nz/calm/

翻訳:小林ゆみこ(東京YMCA・ALF)